株式会社ビジネスインフォメーション アンド アドバイザー
浜野哲夫公認会計士事務所・税理士事務所 / 田中弘実税理士事務所
所属税理士 橘 創一 / 横井 司
会計・税務・
経営関連情報
コラム
マイホームと税金(各種節税&相続対策)平成24年度税制改正後
~知ってトクする!?買ったとき~リフォームしたとき~売ったときに係る税金の優遇制度~
第4回:マイホームを売って、譲渡益がある場合~所得税・住民税の軽減
「居住用財産を譲渡した場合の特別控除の特例・軽減税率の特例」
1.内容
通常、土地や建物を売ったときには譲渡所得(譲渡価額から取得費と譲渡費用を控除した金額)に対して、売った年の1月1日において所有期間が5年を超える場合は”長期譲渡所得”、5年以下の場合は”短期譲渡所得”として、それぞれの税率により所得税額を計算します。
ただし、その土地や建物がマイホームであるならば譲渡所得を抑えるための特別控除額や、税率を軽減するなどの特例を受けることができます。
①特別控除の特例
マイホームである土地、建物を売った場合には所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除することができます。ただし、この特例を受けることだけを目的として入居したと認められる家屋等には適用されません。
【共有所有の場合】
マイホームが共有である場合について、この特別控除額はマイホーム1つにつき最高3,000万円では無く、共有者ごとに最高3,000万円となっております。(共有者ごとに確定申告書の提出は必要)
具体例~譲渡価額1億2,000万円、取得費及び譲渡費用5,000万円、持分 夫3/5、妻2/5の場合の課税価格
・夫 (1億2,000万-5,000万)×3/5-3,000万=1,200万円
・妻 (1億2,000万-5,000万)×2/5-2,800万=0
②軽減税率の特例
通常、土地や建物を売ったときの税率は以下のとおりです。
長期譲渡所得(5年超所有) 所得税(15%)・住民税(5%)
短期譲渡所得(5年以下所有) 所得税(30%)・住民税(9%)
しかしマイホームの売却であり、かつ売った年の1月1日現在で、そのマイホームの所有期間が10年を超えている場合には、①の3,000万円の特別控除適用後の課税長期譲渡所得に対して、その金額に応じて次の軽減税率により税額が計算されます。
課税長期譲渡所得が6,000万円までの部分 所得税(10%)・住民税(4%)
課税長期譲渡所得が6,000万円を超える部分 所得税(15%)・住民税(5%)
具体例~課税長期譲渡所得が9,000万円の場合の所得税額
6,000万×10%+(9,000万-6,000万)×15%=1,050万円
2.適用要件
イ:日本国内にある自分が所有し住んでいる家屋を売るか、家屋とともにその敷地を売ること
なお、以前に住んでいた家屋や敷地等でも、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売れば適用を受けることができます。
ロ:売り手と買い手の関係が親子や夫婦など特別な間柄でないこと(生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人なども含む)
※この要件があるので、離婚による財産分与でマイホームを渡す場合には、離婚が成立し他人となった後に分与しなければこの規定を受けることができません。
ハ:特別控除の特例については、売った年の前年及び前々年にこの特例又はマイホームの買換や交換の特例もしくは、マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと
3.注意点
イ:この規定は家屋の売却ありきなので、家屋を取り壊して敷地だけを売る場合には適用されません。ただし次の二つの要件すべてに当てはまる場合に限り適用することができます。
(a) その敷地の譲渡契約が家屋を取り壊した日から1年以内に締結され、かつ、住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売ること
(b) 家屋を取り壊してから譲渡契約を締結した日まで、その敷地を貸駐車場などその他の用に供していないこと
ロ:売った年の前年及び前々年にこの特例の適用を受けていれば、適用することはできません。
ハ:特別控除の特例については、売った年の前年及び前々年にマイホームの買換や交換の特例又はマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていれば、適用することはできません。
ニ:軽減税率の特例と特別控除の特例は併用できますが、マイホームの買換や交換の特例など他の特例とは併用ができません。
4.補足~マイホームの買換や交換の特例
マイホームの買換や交換により譲渡益が生じた場合において、譲渡価額が1億5千万円以下、所有期間10年以上などの一定の要件に該当するときに受けられる特例です。
①譲渡価額≦買換(交換)資産の価額
譲渡益にに対する課税を買換資産を売るときまで繰り延べることができます。単なる課税の繰り延べで非課税となるわけではないので、それほどお得感は感じられません。
②譲渡価額>買換(交換)資産の価額
所得税の計算において、譲渡益では無く、譲渡価額と買換(交換)資産の価額の差額をベースの譲渡所得の金額の計算を行うものです。
譲渡所得の計算
イ(収入金額) 譲渡価額-買換(交換)資産の価額
ロ(必要経費) (売ったマイホームの取得費+譲渡費用)×(イ÷譲渡価額)
ハ(譲渡所得) イ-ロ
具体例~譲渡価額1億円、取得費及び譲渡費用2,000万円、買換(交換)したマイホームの金額7,000万円
通常の譲渡所得(※特別控除の特例適用)
(1億-2,000万)-3,000万=5,000万 (軽減税率適用で所得税率は10%)
買換の特例による譲渡所得
イ 1億-7,000万=3,000万
ロ 2,000万×(3,000万÷1億)=600万
ハ イ-ロ=2,400万 (所得税率15%)
上記例では『買換の特例』の方が有利ですが、『特別控除の特例』とどちらが得かは当然条件によってに変わってきますので注意が必要です。
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