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浜野哲夫公認会計士事務所・税理士事務所 / 田中弘実税理士事務所
所属税理士 橘 創一 / 横井 司
会計・税務・
経営関連情報
コラム
はじめに
NPO法人の会計には一般的な法人とは異なる独特の規定があり、それを知っているかどうかで納税額に大きな差が生じてきます。そのような規定を知り、理解し、活用できればNPO法人の運営に大きく役立つのではないかと思われます。そこで、今回は”法人税額”と”消費税額”に大きく影響する2つの規定をみていきたいと思います。
補助金は、原則として益金の額に算入され、課税されます。これは補助金が、法人税法第22条第2項で「益金の額に算入すべき金額」としている「無償による資産の譲受け」に該当するからです。
まず前提として、NPO法人は法人税法上「公益法人等」に該当します。
そしてその事業は「収益事業(法人税法上の33業種(下記補足参照)に該当)」と「非収益事業」に大きく分けられ、当然それに関連して取扱いも変わってきます。
さて、通常益金の額に算入する”補助金”ですが、NPO法人(公益法人等)については法人税法基本通達15-2-12で下記のような取扱いを定めています。
「補助金等の収入 法基15-2-12」
収益事業を行う公益法人等又は人格のない社団等が国、地方公共団体等から交付を受ける補助金、助成金等(資産の譲渡又は役務の提供の対価としての実質を有するものを除く。以下15-2-12において「補助金等」という。)の額の取扱いについては、次の区分に応じ、それぞれ次による。
(昭56年直法2-16「八」により追加、平20年課法2-5「三十」により改正)
(1) 固定資産の取得又は改良に充てるために交付を受ける補助金等の額は、たとえ当該固定資産が収益事業の用に供されるものである場合であっても、収益事業に係る益金の額に算入しない。
(2) 収益事業に係る収入又は経費を補てんするために交付を受ける補助金等の額は、収益事業に係る益金の額に算入する。
(注) (1)に掲げる補助金等をもって収益事業の用に供する固定資産の取得又は改良をした場合であっても、当該固定資産に係る償却限度額又は譲渡損益等の計算の基礎となる取得価額は、実際の取得価額による。
先に通達の(2)について見ていきます。これについては文言通り
・収益事業に係る収入や経費を補填するための補助金 → 益金の額に算入する。
これに対して
・非収益事業に係る収入や経費を補填するための補助金 → 益金の額に算入しない。
ということになるのです。
ここで、原則として益金の額に算入される”収益事業に係る補助金”についての特例が通達の(1)なのです。
つまり、”収益事業に係る補助金”であっても、それが”固定資産の取得等”に充てるものであれば益金の額に算入しなくてもいいことになっています。
さらに(注)において、当該固定資産の減価償却計算についてはその計算の基礎となる取得価額は、圧縮記帳のように補助金の額を差し引く必要が無く、そのままの金額で計算することができるので圧縮記帳を適用するより格段に納税者有利になると思います。
これは、補助金や助成金の受入れは資産等取引では無く、一種の資本の元入れ(資本取引)とも考えられることによるものと思われます。
また、自治体の補助金の中には金額も少なく、(消耗品)等の科目で一括経費精算できるような固定資産の取得に対する補助金などもありますが、そのようなものもこの規定の対象になります。その場合、取得資産を貸借対照表で固定資産計上する必要は無く、損益計算書で経費科目として処理しても構いません。
さて、通達の解釈でひとつ問題となってくるのは”補助金、助成金等”の交付者である”国、地方公共団体等”の”等”です。この”等”についての明確な内容については明らかではないのです。迷うところではありますが、この”等”に何が含まれて何が含まれないかの明確な規定は無いことから、国・地方公共団体以外は”等”に含まれると考えて良いと思います(含めないという根拠条文がありません)。
ただし、念のため各所轄の税務署に該当するか否かを問い合わせするのが賢明でしょう。
では具体的な会計処理及び税務処理はどうすればよいのでしょうか。収益に計上せず、かつ資産計上額は購入額の全額とする。相反する条件を満たす処理を見ていきましょう。
会計処理としては、補助金等の受入時には(補助金収入)等の科目で全額を計上します。そして固定資産の購入時には取得価額の全額を各固定資産の科目で計上することになります。
そして補助金の額を益金の額に算入させない為に法人税別表四において減算(留保)させます。これによって減価償却は取得価額の全額で行い、かつ法人税の納税額計算においては補助金等相当額を所得から減算することで課税対象から除くことができるのです。
また、留保することによって別表五(一)において税務上の利益積立金額の調整も同時に行うことができます。
(補足:法人税法施行令第5条に定められた33業種)
物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業、運送業、倉庫業、請負業、印刷業、出版業、写真業、貸席業、旅館業、料理店業その他の飲食店業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊戯所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産の提供業
国又は地方公共団体、つまり行政機関や地方自治体から受けた委託事業は、原則として指定33業種のうちの「請負業」に該当するので法人税の課税の対象となり、また「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供」に該当するので消費税の非課税取引のみの契約で無い限り、消費税の課税対象ともなるのです。
通常法人税の課税対象となる自治体などからの委託事業についてですが、その例外として法人税法基本通達15-1-28で下記のような取扱いを定めています。
「実費弁償による事務処理の受託等 法基15-1-28」
公益法人等が、事務処理の受託の性質を有する業務を行う場合においても、当該業務が法令の規定、行政官庁の指導又は当該業務に関する規則、規約若しくは契約に基づき実費弁償(その委託により委託者から受ける金額が当該業務のために必要な費用の額を超えないことをいう。)により行われるものであり、かつ、そのことにつきあらかじめ一定の期間(おおむね5年以内の期間とする。)を限って所轄税務署長(国税局の調査課所管法人にあっては、所轄国税局長。以下15-1-53において同じ。)の確認を受けたときは、その確認を受けた期間については、当該業務は、その委託者の計算に係るものとして当該公益法人等の収益事業としないものとする。(昭56年直法2-16「七」により改正)
これは、”実費弁償方式”に該当し、かつ所轄税務署長の確認を受けることができれば収益事業には該当しないということです。逆に言えば”実費弁償方式”に該当していても確認を受けなければ収益事業とされるので注意が必要です。
また、この税務署長の確認についてですが、委託事業のみを行っている場合に限り、委託事業以外の事業を行っている場合には該当しません。さらにおおむね5年以内の期間で5年ごとに更新が必要なものであり、継続性を前提としていることから1回限りの委託事業では確認を受けることはできないこともあり、これに該当するものは、かなり限られてしまいます。
収益事業に該当する委託事業であれば、基本的に対価性が認められ消費税が課税されますが、その例外として消費税法基本通達5-2-15で下記のような取扱いを定めています。
「補助金、奨励金、助成金等 消基5-2-15」
事業者が国又は地方公共団体等から受ける奨励金若しくは助成金等又は補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律第2条第1項《定義》に掲げる補助金等のように、特定の政策目的の実現を図るための給付金は、資産の譲渡等の対価に該当しないことに留意する。
(注) 雇用保険法の規定による雇用調整助成金、雇用対策法の規定による職業転換給付金又は障害者の雇用の促進等に関する法律の規定による身体障害者等能力開発助成金のように、その給付原因となる休業手当、賃金、職業訓練費等の経費の支出に当たり、あらかじめこれらの雇用調整助成金等による補てんを前提として所定の手続をとり、その手続のもとにこれらの経費の支出がされることになるものであっても、これらの雇用調整助成金等は、資産の譲渡等の対価に該当しないとされています。
つまり、委託事業であっても「特定の政策目的の実現を図るため」のものであれば、対価性が無いということになり消費税は課税されないのです。
また、この「特定の政策目的」として(注)書きで「雇用」に係るものが明確にされています。例えば現在厚生労働省が実施している”ふるさと雇用再生特別基金事業”はこれに該当するのでその助成金等に消費税は課税されません。
NPO法人は通常の法人のように利益を追求しませんが、収益事業を行う限り、通常の法人と同じように税が課されます。
活動費補填の為の補助金や助成金等も課税の対象となってしまうところは釈然としませんが、それが実情です。ただ、上記の規定のように条件さえそろえば課税の対象外となるなどの有利な規定もあるので、内容を理解し有効に活用することで納税負担の軽減に役立てればと思います。
(このコラムは2010年07月29日現在の情報に基づいて作成しました。)
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