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相続税額は按分割合の端数処理によって異なることがあります!

相続税額は按分割合の端数処理によって異なることがあります!

相続税額は、まず、被相続人から取得した財産の評価額(課税価格)を求めます。
次に、各財産取得者の課税価格の合計額から法定相続分課税方式により「相続税の総額」を求めます。
さらに、「相続税の総額」に各財産取得者の財産取得割合(按分割合)を乗じて「各財産取得者の相続税額」を求めます。
最後に、「各財産取得者の相続税額」から各財産取得者ごとの税額控除等を調整して、「各財産取得者の納付すべき相続税額」を求めます。

按分割合とは…

課税価格の合計額のうち各財産取得者の課税価格の占める割合のことですが、この割合は「相続税の総額」を「各財産取得者の納付すべき相続税額」の基礎となる「各財産取得者の相続税額」に分割するものです。
按分割合は基本的に「分数」となりますが、小数点以下第2位未満の端数がある場合には、端数処理を行い「小数」を用いることもできます。
なお、端数処理の方法は、法律において具体的な定めはありませんが、合理的な方法であることが必要と考えられます。
「分数」:例えば…149,932千/277,464千
「小数」:例えば…0.54

現行の相続税法では、税額控除等は基本的に各財産取得者ごとに適用されるため、按分割合の端数処理の違いにより、「各財産取得者の納付すべき相続税額」及び「その合計額」が異なることがあります。
では、これより具体例を使って確認してみたいと思います。

【ケース1】相次相続控除額の有効利用

前提条件:
相続人2人(配偶者、子供)、法定相続人2人(配偶者、子供)
一次相続で被相続人が取得した財産の価額:250,000千
一次相続における被相続人の相続税額:50,000千
単位:円

課税価格の計算

配偶者:149,932千
子供:127,532千
合計額:277,464千

相続税の総額(法定相続分課税方式)
課税価格の合計額 277,464千
基礎控除額 70,000千
課税遺産総額 207,464千

配偶者子供
法定相続分1/21/2
法定相続分に応じる取得金額103,732千103,732千
相続税の総額の基となる税額24,492,80024,492,800
相続税の総額48,985,600
(24,492,800+24,492,800)

按分割合

配偶者子供
「分数」149,932千÷277,464千127,532千÷277,464千
「小数1」…あん分割合の合計が1になるように、小数点以下第3位以下の数字の大きいものから順次切り上げ0.54036…→0.540.45963…→0.46
「小数2」…あん分割合の合計が1になるように、小数点以下第2位までの数字の大きいものから順次切り上げ0.54036…→0.550.45963…→0.45

各財産取得者の相続税額…「相続税の総額」×按分割合

配偶者子供合計
「分数」26,470,13222,515,46748,985,599
「小数1」26,452,22422,533,37648,985,600
「小数2」26,942,08022,043,52048,985,600

配偶者の税額軽減額

配偶者子供
「分数」26,470,132
「小数1」26,452,224
「小数2」26,470,132

相次相続控除額

「分数」18,912,79518,912,795
「小数1」18,912,79516,087,204
「小数2」18,912,79516,087,204

各財産取得者が納付すべき相続税額

配偶者子供合計
「分数」06,428,2006,428,200
「小数1」06,446,1006,446,100
「小数2」05,956,3005,956,300

今回の場合では、「小数2」が471,900円又は489,800円有利となりました。

これは、配偶者の按分割合を切り上げたため「子供の相続税額」及び「子供の納付すべき相続税額」を減らすことができた影響です。

なお、「配偶者の相続税額」は増えますが、その増えた相続税額は「分数」及び「小数1」で控除しきれない額があった「配偶者の相次相続控除額」と相殺することができ、「配偶者の納付すべき相続税額」は変わりません。

【ケース2】配偶者の税額控除額の全額適用

前提条件:
相続人2人(配偶者、子供)、法定相続人2人(配偶者、子供)
単位:円

課税価格の計算

配偶者:149,932千
子供:127,532千
合計額:277,464千

相続税の総額(法定相続分課税方式)
課税価格の合計額 277,464千
基礎控除額 70,000千
課税遺産総額 207,464千

按分割合

各財産取得者の相続税額…「相続税の総額」×按分割合

配偶者の税額軽減額

各財産取得者が納付すべき相続税額(配偶者の税額軽減額後)

今回の場合では、「小数1」が17,900円不利となりました。

これは、配偶者の按分割合を切り捨てため「配偶者の税額軽減額」がその切り捨てた割合だけ税額控除できなかった影響です。

結論

按分割合や端数処理によっては「各財産取得者の納付すべき相続税」が異なる場合が出てきます。従って、「各財産取得者の納付すべき相続税」を求めるときは、下記のことを留意・検討することをお勧めします。

(1)贈与税額控除額(暦年)、相次相続控除額、外国税額控除額のうち控除しきれない額がある者への按分割合を切り上げて高くする。

(2)配偶者の按分割合を切り捨てずに、配偶者の税額軽減額を全額適用する。

(3)相続税額の2割加算対象者への按分割合を切り捨てて低くする。

なお、上記の計算は平成20年12月31日現在の法律に基づいています。

参考

【相続税法第17条-抜粋】
「財産を取得した者に係る相続税の課税価格が財産を取得したすべての者に係る課税価格の合計額のうちに占める割合」

【相続税法基本通達17-1-抜粋】
「法第17条に規定する割合に小数点以下第2位未満の端数がある場合において、その財産の取得者全員が選択した方法により、各取得者の割合の合計値が1になるようその端数を調整して、各取得者の相続税額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。