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土地を貸すときの注意点(土地賃貸契約書と借地権)

土地を貸すときの注意点(土地賃貸契約書と借地権)

1.土地を借りてショッピングセンターやホームセンターをつくる

消費の回復を予想して、たくさんのショッピングセンターやホームセンターが出来ています。

ダイエーが急成長した頃は、毎年土地が値上がりしました。借金をして土地を購入し、新しいダイエー店舗を造ります。ダイエーの店舗がオープンすると地域が活性化し土地の値段が上がり、値上がりした土地を担保にまた新しい店舗を造りました。しかし、急激な金融引き締めにより バブルがはじけ、土地の値段が下がり、ダイエーは行き詰まってしまいました。

最近は土地を購入せずに賃借し、投資金額を抑えて次々とショッピングセンターやホームセンターを造っています。幹線沿いにまとまった土地を持っている農家に、土地を貸して欲しいと申し出があります。名前がよく知られたショッピングセンターやホームセンターですと、地主さんも安心して貸しておられるようです。

昔よく「土地を貸すと半分取られたようで、返してもらいたくとも返してもらえない」とか、「土地を貸すと取られてしまうので、貸さない」と言ったことを聞きました。地主さんは半永久的に土地を貸すなどとは考えていないのに、借地権が発生し、地主さんがその土地を将来自由に使うことが出来なくなることがあるようです。土地を使おうとすると、売ったつもりもない借地権を買い戻さなければならなくなり、もらった地代をはき出さなければならないことも起こります。

2.借地権など土地に対する権利の種類

1)借地権(しゃくちけん)
建物を所有することを目的に、地主さんから土地を借りて使用する権利のことです。借地権の契約期間は最低30年以上必要です。また、30年以上経ち、契約期間が終わっても、借地人が土地賃借の更新を求めた場合は、同一の条件で契約を更新しなければならず、更新後の契約期間は1度目が20年以上、2度目以降は10年以上必要です。地主さんが契約更新を拒絶できるのは正当な事由がある場合のみに限られます。定期借地権と区別するために普通借地権ということもあります。
この借地権には、地上権と土地賃借権の2つの種類があります。

イ)地上権(ちじょうけん)
借地権の種類のひとつです。地代を支払う義務をおいますが、地主に断ることなく自由に売買したり、又貸しや建て替えが可能な権利(借地権)を地上権と言います。地上権を設定すると地主さんに登記を請求することがでます。また、抵当権を設定して地上権を担保に融資を受けることもできます。借地人の力がとても強く、土地を所有しているのに近い権利です。民法では地上権を「他人の土地に於て工作物または竹木を所有するためその土地を使用する権利」と規定しており、所有権と同じ種類の権利と考えています。

ロ)土地賃借権(とちちんしゃくけん)
この借地権は、地上権とは違い、売却や転貸、建替の際には地主の承諾が必要になります。売却や建替の承諾を得るためにには、借地権価格の1割程度の承諾料を支払うのが一般的です。土地賃借権には抵当権の設定はできません。また、地主さんは賃借権を登記する必要はありません。ただ、後で述べる定期借地権の場合は登記されるのが一般です。賃借権の法的性格は、賃貸借契約によって対価を払って使用できる権利で、「債権」とされており、土地の所有権や地上権の「物件」とは法的性格が異なります。

2)定期借地権(ていきしゃくちけん)
平成4年8月に施行された「借地借家法」により新たに誕生した権利です。従来の借地権と異なり、当初定められた契約期間で借地契約が終了し、その後の更新はありません。つまり、土地は地主の元に返ってくるのです。

この制度によると、土地所有者は従来に比べ、安心して土地を貸すことができますので、借主は、従来より少ない負担で土地を借りることができ良質な住宅を持つことができます。土地の貸借が円滑に行われることが期待できます。

3.定期借地権の種類

1) 一般定期借地権
定期借地権付き住宅に利用されるもので、借地期間は50年以上です。期間の満了に伴い、原則として借り主は建物を取り壊して土地を返還する必要があります。

2) 建物譲渡特約付借地権
契約後 30 年以上経過した時点で土地所有者が建物を買い取ることを、あらかじめ約束する契約です。買い取った時点で借地権がなくなります。 契約期間は30年以上必要です。公正証書による契約である必要はありません。ただし、期限の定めのない借家権が与えられるので注意が必要です。契約期間が満了しても、借家権があるので、地主さんは土地を自由に利用することは出来ません。借家権に相当する対価(権利金)を収受することが出来ます。

3)事業用借地権
土地を借りてショッピングセンターやホームセンターをつくる場合、この事業用借地権を設定することが多いようです。

借地期間は 10 年以上 20 年以下の短期契約となります。事業用に建物を建てて利用するための定期借地権で、住宅用には使えません。

量販店や外食産業がよく利用しています。事業用借地権の設定契約にあたっては、公正証書により作成することが必要です。地代の算定方式(更新ルール)と見直し期間を定めておくことをおすすめします。また、譲渡や転売については禁止しておく方がよいでしょう。建物の種類と用途を定めます。建物の買取請求が出来ないことを明記しておきます。契約終了後、更地で返却されることを記載しておきましょう。

4.建設協力金方式による土地の賃貸

建設協力金を受け取って、借り主の希望する建物を建て、建物の所有権を地主さん名義にし、土地ではなく建物を賃貸することがあります。建設協力金は家賃と相殺して返済します。地主さんは、実質地代相当額を受け取ることになります。建物譲渡特約付借地権 と同様、借家権が発生します。

5.借家権(しゃっかけん)

借家権とは旧借家法で定められた、建物の賃借権のことです。旧借地権と同じように、借主側を保護する側面が強くなっています。平成11年制定の借地借家法において、借地権同様、定期借家権が導入され、新しい契約はすべてこの形の契約に変わっていきつつあります。

借地借家法は、従来の借地法・借家法では実質無期限になっていた借地権・借家権に制限をつけ、地主に不利益な要素をなくし、賃貸市場の活性化をはかることを目的に作られた法律です。これにしたがって、現在では契約のすべてが定期借家権へ移行しつつあります。もちろん家主には、契約期間満了前の通知義務や、定期借家権について借里主に説明する義務がありますが、契約満了時に借り主に退去してもらうことが可能となりました。

6.地代の決定方法

地代の改定にあたっては、契約上漠然とした表現になっており、実際の改訂になって貸し主と借り主の意見が対立することが少なくなりません。例えば、次のように契約書状で定めることにより、意見の対立を少なくすることが出来ます。

新固定資産税+(旧地代-旧固定資産税)× 一般消費者物価上昇(土地価格上昇率)

以下の契約書式(サンプル)ご用意しています。
イ、(普通)借地権の発生する契約の例
ロ、定期借地権の内、事業用借地権契約の例
ハ、建設協力金方式による土地の賃貸契約の例