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出向者の給与負担金と法人税・消費税

■出向者の給与負担金と法人税・消費税

グループ会社間などで従業員が他の法人に従業員として出向する場合において、出向者の給与を従来どおり出向元の法人が支給し、出向先の法人は出向元の法人に対しその従業員の給与に相当する給与負担金を支払うときは、税務上問題となる場合があります。

(1)給与負担金と実際の給与金額が同額の場合

出向先法人から出向元法人に支払う給与負担金の金額と出向元法人が従業員に対して支払う給与の金額が同額の場合には、出向先法人が例え「経営指導料」などの名目で支払った場合においても、出向先の法人において「その出向者の労務の提供に対する実質的な対価」と判断される範囲内の金額であれば、法人税法上問題となる場合はありません。
消費税については、実質的に給与と判断されるものである限り、不課税となります。
また、出向元法人においては、受け入れる給与負担金と従業員に支払う給与の両建てとなるため、法人税については所得金額に、消費税については納税額に影響はありません。

(2)給与負担金が出向者の給与金額より多い場合

給与負担金の金額と出向者の給与金額が違う場合には注意が必要です。給与負担金のほうが多い場合には、給与負担額超過部分について、経営指導料や出向者の特殊能力等に応ずる技術指導料などを支払うことに合理的な理由がある場合は、超過部分も出向先法人において損金算入が認められますが、合理的な理由が無い場合には、寄附金として扱われます。例えば「売上高の○%を経営指導料とする」などという決め方をしている場合は、給与相当部分以外の金額に合理的な理由が無い場合は寄附金として取り扱われます。
出向元法人においては、出向者に対する給与負担額を超える部分が課税所得となります。
消費税については、経営指導料等となる(合理的な理由がある)場合は課税仕入となりますが、寄附金(受贈益)となる場合は不課税です。

(3)給与負担金が出向者の給与金額より少ない場合

給与負担金のほうが少ない場合には、給与格差を補填するなどの合理的な理由が無い場合は、出向先法人において給与負担額不足部分は受贈益として扱われます。この場合の合理的な理由とは「出向先法人の給与規定や給与水準に基づいて給与金額が計算がされている」「出向先法人が経営不振等で出向者に賞与を支給することができないため、代わりに出向元法人が出向者に対して賞与を支給する」などというケースが該当します。
出向元法人においては、上記のような合理的な理由が無く、単に出向先法人の費用を肩代わりしているような場合は、寄附金として取り扱われます。
消費税については、給与・受贈益(寄附金)ともに不課税です。

(4)まとめ

給与負担金と実際の給与金額に差額がある場合には税務上問題となるケースがありますので、給与負担金の金額を意図的に増減できるような契約は避けるべきです。出向負担金を支給する際は、出向規定や出向者用の給与規定をきちんと作成し、その規定通りに支給をしたほうが良いでしょう。

(注)出向が100%グループ法人内で行われる場合は、上記で寄附金となる給与負担金は、支出した法人において損金不参入になるとともに、受領した法人の受贈益も益金不算入となります。(TY記)