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中小企業金融安定化法実務マニュアル[2010.12]

中小企業金融安定化法実務マニュアル

~返済猶予適用にあたっての金融機関との対応~

 

  • はじめに

平成21年12月4日に施行された金融安定化法について、その利用状況が金融庁から発表されている。22年8月31日発表資料によれば、この22年 6月末までに、中小企業者である債務者からの貸付条件の変更等の申込みは全国で474,815件にのぼり、そのうち実行されたのは390,738件となっ ている。

全国で中小企業者数は約420万件あるといわれており、既にその10%強の事業者からの

申し込みがあったということになる。今回は、その申し込みから条件変更後の金融機関への書類提出にいたるまでの対応について説明したいと思う。

  • 条件変更の申込み

(1)計画

以前にも述べたように、返済猶予の申込みを安易にすべきでないのは

いうまでもないが、申し込みに至った原因とその対策及びいつになったら正常に返済できるのかをまず吟味する必要がある。

この場合、返済猶予後に新規融資が望めないことは無論、場合によっては手形の割引さえできないことも考慮する必要がある。

この段階で、正常に返済できる計画ができないのであれば、条件変更が認められる可能性は低い。なぜなら、金融機関はただ

支払い不能に陥っただけで返済猶予に応じても不良債権処理の先送りにしかならない判断するからである。

(2)再建計画書の作成

上記でまとめた再建計画案を文書及び数値でまとめることになる。

この計画案は金融機関でも何人もの目をとおり、あるいは金融庁にも

提出されることを念頭に、事業の概要から詳細に記入する必要がある。

作成する必要があるものを簡単な説明を付して順に記載する。

  • 事業の概要(当社の特色および業界における位置関係も記載できれば、なお良い)
  • 返済猶予に至った原因(できるだけ具体的に)
  • その原因に対する対策とその実行案
  • 申込み時点での金融機関別の借入金残高、金利、月返済額、担保の設定状況
  • 上記借入金の返済猶予申込額とその年数

(金融機関が複数ある場合には、その条件が平等であることが絶対条件なので

融資残高が1年未満であるから、あるいは担保設定されているから、第三者の連帯保証があるから等の理由により猶予の条件に差をつけることは原則として認められない)

  • 申込時点での残高試算表(金融機関によっては、その時点での各金融機関の預金等

の残高証明書の提出を求められる場合がある)

  • 損益および資産負債計画(返済猶予期間はもとより、再建後の損益計画も作成する必要があり、5カ年計画は必要)

⑧ 資金繰り計画(過去1年間の月別資金繰り実績と今後1年間の月別資金繰り計画は必要)

 

(3)申込み

上記再建計画案をもとに各金融機関に申込

この場合、最低1ヶ月前には申し込む必要がある。間際での申込みでは、金融機関によっては延滞扱いになり、思わぬ金利を支払う必要が生じる。

  • 返済猶予受理

金融機関との合意が得られれば、条件変更契約書等の書類を交わすのであるが、その契約期間についての対応は金融機関によってまちまちである。こち らの希望する条件(期間)がそのまま通ることは少なく、金融機関の意向が優先される。保証協会付きの融資であればおおむね1年間となるが、プロパー融資の 場合は半年ないし3ヶ月間が一般的である。またCLO融資(ローン担保化証券)については制度上の問題で返済猶予が受けられず、保証協会に代位弁済しても らい、10年均等償還するという手法がとられている(各自治体により、取り扱いは多少異なる)。

  • 返済猶予後の対応

契約期間満了時に正常返済できればよいが、引き続き返済猶予を継続するには再度

金融機関と契約書を交わせねばならない。もちろん、無条件ではなくその際にも再建計画の実施状況を提出し、各金融機関に状況の説明を行うことになる。

複数の金融機関がある場合には、まずメイン行と交渉を行い、契約書を交わす必要がある。これは取り決めではないが、メイン行が契約を更新すれば、他行も速やかに

更新することが出来るからである(この際、確認としてその契約書の写しの提出を求められることが多い)。

  • 条件変更終了

再建計画が予定通り終了すれば、正常に返済がスタートするのであるが、金融機関が複数ある際にはその返済額について、十分な打ち合わせが必要であ る。各金融機関は「平等に」と要望してくるのは当然として、この平等性も、担保の有無 当初の返済金額、借入残高の大小等様々な観点から検討しなければな らず、容易ではない。

  • 最後に

金融円滑化法に基づく返済猶予について簡潔に説明したつもりではあるが、これがすべて正しいというわけではない。なぜなら、その事業体によって 様々な融資の形態があるからである。ここに記載した内容は、一般論だと理解してほしい。しかしながら、共通して言えることがある。それは、この制度を利用 することにより再建をはかるのであるが、その過程での各金融機関の担当者、申請した代表者、経理財務担当者は相当な精神的及び肉体的な負担を強いられると いうことである。

また、その債務の中に第三者の連帯保証がある際には特に注意が必要である

(その第三者が事業者である場合、新規融資を断られる可能性も否定できない)。

やはり、このような申請をすることの無いような経営にあたることが肝要であろう。

 

 

(このコラムは2010年8月30日現在の法令等に基づいて作成しました。)