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小規模企業共済等掛金控除~

小規模企業共済等掛金控除を適用できる人とは?

所得税法上、小規模企業共済制度の掛金を支払った場合には、支払った人の所得控除となりますが、自己以外の契約に係る掛金を支払った場合でも支払った人の所得控除となるのでしょうか?

■小規模企業共済制度とは

小規模企業共済制度とは、小規模企業の個人事業主や役員が事業を行っている間や任期中に掛金を積み立て、将来廃業や退職をしたときに、それまで積み立てていた掛金に応じた共済金を受け取ることができる、いわば個人事業主や役員の退職金制度です。

■制度改正による加入対象者の拡大

小規模企業共済制度が改正(施行日は平成23年1月1日)され、個人事業主の配偶者や後継者などの「共同経営者」で一定の要件を満たす人が加入できるようになります。

一定の要件とは……

・事業に必要な資金の負担をしていること又は重要な業務執行の決定に関与していること
・業務執行等の対価を受けていること

■掛金の取り扱い

小規模企業共済制度の掛金は所得控除となりますので、所得税・住民税の軽減を図ることができます。

■所得控除の対象者とは?

今回の改正により、共同経営者として個人事業主の配偶者が加入し、その配偶者の小規模企業共済制度の掛金を個人事業主が支払った場合には、個人事業主の所得控除として申告できるのでしょうか?

所得税は累進課税(所得が増えるほど税率が高くなる)であり、一般的に個人事業主のほうが個人事業主の配偶者(共同経営者)より所得が高くなるため、有利となる個人事業主の所得控除として申告したいところです。

所得税法第75条第1項によれば、「居住者が、各年において、小規模企業共済等掛金を支払った場合には、その支払った金額を、その居住者のその年分の総所得金額、退職所得金額または山林所得金額から控除する。」と規定されています。

この規定に事例を当てはめますと、「個人事業主(居住者)が(配偶者の)小規模企業共済等掛金を支払った場合には控除する。」とも解釈することができそうですが、個人事業主の所得控除として申告することはできません。

これは「所得税法第75条第1項の規定は、居住者が、各年において、自己が契約した共済法の共済契約に基づく掛金を支払った場合に、その支払った金額については所得控除を認めると解するのが相当である。」という裁決(平成15年1月28日)がでているからです。

小規模企業共済は、個人事業主(今後は共同経営者も含む)のための制度であり、個人事業主でなければ加入することができず、また、毎月の掛金も個人事業主が負担しなければならないと規定されているからというのが、その理由です。

以上の通り、小規模企業共済制度の契約者本人が負担すべき小規模企業共済制度の掛金をその契約者本人が支払った場合のみ所得控除が認められますので、個人事業主が配偶者の小規模企業共済制度の掛金を支払っても、個人事業主の所得控除として申告することはできません。

また、この事例の場合では、小規模企業共済制度の掛金を支払っていない配偶者も配偶者自身の所得控除として申告することはできません。

小規模企業共済制度の掛金の支払いをすべき者、所得控除として申告できる者及びその要件をきちんと理解して、適正な税務申告を行いましょう。

個々の具体的な税務申告に適用する場合には、専門家にご確認下さい。

(このコラムは2010年8月30日現在の法令等に基づいて作成しました。)